欧州で主流になりつつある遺伝子分析!ついに日本で実現
日本であまり知られていませんが、鳩レースの本場・ヨーロッパでは10年くらい前からレース鳩距離レースの強豪として知られるデスメターやメールラーンを中心に数々の成功をもたらしていることはおそらく日本では初となるレース鳩の遺伝子分析を行う機関が設立されました。代表者である平川智一氏に活用されている「LDHA」と「DRD4」という2つの遺伝子型について説明をいただきました。
その1 「筋肉系」のLDHA
鳩レースは競走馬の世界と同じくブラッドスポーツです。ですから種鳩はピジョンスポーツの本場と言われているヨーロッパから集めました。導入するにあたってオークションを活用したのですが、出陳鳩のデータをみていくうちにヨーロッパでは、遺伝子型を重要視している強豪が多いことに気づきました。しかも優秀とされる遺伝子型のトリは必ずといっていいほど爆発的に金額が上がっていきます。それだけ重要な要素なんだと強く感じました。
遺伝子型は主に2つ。LDHAとDRD4です。LDHAは乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の略称で、これは筋肉内のエネルギー代謝にかかわる遺伝子で持久力、スピード、回復力に影響を与えるようです。型は「A」と「B」の2種類あり、これらの配列によって優劣が決まると言われています。
秀逸なパフォーマンスを発揮するといわれる型は「AA」と「AB」です。某研究機関の調査によると「AA」は1%未満、「AB」は12%しか該当していない中、これらの2つの方からのAP率が非常に高かったという結果が出ており、いかに「A」を持つトリが重要なのかを示すエビデンスとなっています。
その一方で、メールラーン(※ベルギー長距離界のトップレースマン)の”イェレナ”とスヘーレ兄弟(※オランダの中距離会の強豪)の”スーパーボーイ”のように「AA」には銘種鳩と言われるトリが、多数該当しており、直接的な解析は実現できなかったものの、直仔やその一族の遺伝子型からファンダイクの”カニバール(KBDB中距離ナショナルAP賞1位)”やその孫にあたる”コープマンのクライネ・ディルク(若鳩ワールドCH5位他)”―ブリーダーとしても”世界的”と言われるこの2羽も「AA」の可能性が高いと言われています。
その2「頭脳系のDRD4」
2つ目のDRD4は、ドーパミン受容体と言われるものです。人間においては知性に影響する遺伝子として知られていますが、レース鳩においてもパフォーマンスの高さに関わっているという研究結果が出ています。「C」と「T」という2種類の方を4桁に配列したもので、後者の「T」があると優秀ということになります。なお長距離レースのチャンピオンが多く該当していることから、知性というより「帰巣性」、その他スタミナにも影響を与えていると考えられています。
最も優れているのが「T」が2つある型とされ、現時点では確認されているのは主に「CT/CT」と「CC/TT」となります。「CT/CT」の代表例は1億円以上の値がつき、鳩界どころか全世界に衝撃を与えた”アルマンド”でしょう。2年連続ナショナルAP賞、オリンピアードにも選出―と桁違いの翔歴ですが、血統の知名度はあまり高くありません。それなのになぜここまでの価格がついたのか、「?」という型が多かったと思います。落札されたのは、シン・ウェイという中国の方でしたが、彼の本国でも遺伝子は重要視されています。翔歴、そして「CT/CT」という方が爆発的に金額を膨れ上がらせた要因だと私は感じています。
またデスメター&レスティアーンの”エルシー(*KBDB長距離ナショナルAP賞1位)”も「CT/CT」です。デスメターは”ウィットペン・リバウド(CC/TT)”、”レッドエース(CC/CT)”といった、「T」をもつKBDB長距離ナショナルAP賞1位鳩を多数所有しており、近年のINレースにおける彼らの成果は、DRD4を活用した鳩作りによるものだと噂されています。また世界最長距離レース・バルセロナIN優勝鳩の中にも「T」2つのトリが確認されており、19年の”ジェフ(CT/CT)”がそうですね。ちなみにその母親の”116(CT/CT)”は他にもナショナルシングル鳩を誕生させているのですが、LDHAは「A」。先ほどの「AA=銘種鳩」という一つの証明になっています。
「T」は2つあるのが理想ですが、日本でも著名なマルコ・デコックの”ロックフェラー(KBDBオールラウンドナショナルAP賞1位・CT/CC)”を筆頭に「T」が1つでも、大きな成功を収めたCHが多数確認されています。そのため「T」の遺伝子をもつトリは、かなり重宝されているようです。
遺伝子解析をここ日本で
鳩レースの本場においてここまでエビデンスがあるのならば―とヨーロッパの遺伝子分析サービスに申し込みをしたところ、「日本の鳩は出来ない」と断られました。それならば国内でと思いまして動物、畜産系の遺伝子専門機構に相談し、実現を試みたところ、断られ続けましたが(笑)、LDHAとDRD4が分析できる機関を見つけることができました。現在、種鳩中心に検査し個人で楽しんでいますが、私のようにこの2つの遺伝子型をご存じで分析したくても手段がわからない方が多いのではないかと思いまして、遺伝子型を活用すれば、ヨーロッパでの臨床結果から日本鳩全体のレベルアップに繋がる可能性も高いですし、それならばと思いきって本分析センターを開設したわけです。
レース鳩もメンデルの法則に従って、遺伝子は継承されていきます。親にLDHAなら「A」、DRD4なら「T」がなければ、子孫にこの2つの型が反映されることは”まずない”ということです。ぜひこの機会に自鳩舎の中から、優秀な遺伝子を見つけてみてはいかがでしょうか。遺伝子分析を希望される方はご連絡ください。